大家さんが店子の肝の小ささに驚いているようです
「ちわー。もう開いてますか」
「おお、四介さんじゃないか。居酒屋じゃあないんだから、開いてますかってことはないがな。まあ、おあがり」
「どうも、ご無沙汰しております。いやあ、実はちょっくら珍しいことがありやしてね」
「…分かった。だから、Pixivもほどほどにしなさいと言ったろう。放っておけばいいんだ、架空請求なんてものはな」
「大家さんが想像する俺の珍事ってなあ、お絵かきサイトでR-18詐欺に遭うくらいが関の山ってかい。
いや、そうじゃねえんですよ。あのね、はてなブログからidコールが来た」
「…運営にどれほどの恨みを買ったら、公式からidコールが来るんだろうな。何をやらかした」
「いい加減にしてくんな、大家のくせにボケてばっかりじゃねえかまったく。
いや、何でも。この間キャンペーンで書いた記事を拾ってもらったらしいんで」
「あー見た見た。アレだろ? 他の受賞者の方がサラッときれいにまとめてるのに、お前さんだけ2倍ぐらいの文字数で、黒歴史を語り倒してたやつだろう。あれは笑った」
「ひとの美しい思い出を、ネタとして昇華すんじゃねえや。…実は俺も、顔から火が出たけど。
まあ、それでさ。幾つかスターを頂いたりしたから、アクセス数を見てみたんですよ」
「伸びてたかい」
「聞いて驚けクソ大家。…なんと、普段の6倍になってた」
「誰がクソ大家だまったく。…とにかく、6倍とは驚いた。さすが公式の力だね。
…で、1日でいくらぐらいだったんだい」
「初日は60台前半。そのあと数日は、そのビッグウェーブが続いたらしい」
「…思ってたよりはるかに切ない話だったね。普段のことはもう聞かずにおこう」
「ま、こんな中身の薄いブログでそれだけ見てもらえりゃ御の字でしょう。
更新も大してしてねえしね」
「ならなおのこと、これを機に、ご挨拶のひとつも書いたらどうなんだい。
読者登録させて頂いた、して頂いた方もいるんだろう。有り難いことじゃないか」
「それがね。…忘れたんで」
「なにを」
「いままで、どんな感じで書いてたのかを忘れた」
「…ビビったんだな。
さっきからたまに、マナーモードみたいに震えてる理由がようやく分かったよ」
「…あいすいません。
っていうかね、どう考えても、フォロー頂いた人とレベルが違いすぎる」
「そりゃそうだろう。今後、鋭意努力したらいいじゃないか」
「いや、まじめに背伸びして書こうとすると、また熱いポエムになることに気がついたんで…。
ネット上に新しい黒歴史を刻むことに躊躇いを覚える」
「お前さんの人生は、ろくでもない思い出に満ちる運命なんだね。
…まあ、気負っても仕方がない。ぼちぼちやんなさい」
「へい。
…そのような訳にあいなりまして、どなたさまも宜しければ、気の向いたときにお立ち寄りくださいませ」
「いったい何者なんだお前は」