あなたの歌がききたくて。

小説とVOCALOIDと知らない人のことばが好き。

最近読んだ本を書きます(2018年5月)

お久しぶりです、四宮です。気づけば連休が終わろうとしております。
やりたかったことのうちの一つが想像以上に時間を食いまして、悔いてはいませんがどうしてこうなった。

あと、先日は「非公開の日記をうっかり公開する」というおもしろ事件を起こしまして、お目汚し大変申し訳ありませんでした…。オンラインでは二度と日記は書きません。

リハビリがてら、最近読んだ本の感想でも。

東野圭吾ラプラスの魔女


ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)


別々の温泉地で起きた、一見ありふれた中毒事故。分析の参考に呼ばれた大学教授・青江はその共通点を偶然見つけ、常識では考えられない事件の真相に近づいていく。という感じの…サスペンス?なんですかねこれは。

久しぶりに日常系以外のミステリーを読んだ気がするけど、本格とも違う気がする。東野圭吾の得意なジャンルなんでしょうね。さらっと読めて勧善懲悪で終わる系の、夜中まで読み終われないタイプの娯楽作品、好きです。

この5月に映画が公開されていますが、主人公の一人である青江教授が、およそ櫻井翔氏というイメージではなく…。危険な香りを嗅ぎ取ったので、観に行くかを保留していたのですが、やっぱりというか案の定だったみたいですね。
広瀬すずちゃんはわりとイメージ通りなので迷うっちゃ迷いますが…何のジャンルにせよ原作大好きマンなので(煮え切らない)。

梨木香歩『家守綺譚』


家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚 (新潮文庫)


西の魔女が死んだ』などで有名な梨木香歩の作品。明治期(おそらく)のある地方にて、亡くなった旧友宅の家守を始めた青年。彼が出会う怪異の短編集。

古めかしくもさらりとした語り口で、ファンタジーと呼ぶのは無粋かなと。日々移り変わる四季が描かれて、短いながら満足度が高いと思います。日本の季節はいいものですね。
とにかく、非常に文章が美しい。

 ーー寒いときは、湖の底はしんとしているのですって。それほど寒いとは感じないらしいのですけれど、外が寒ければ寒いほど、湖はしんと静まってゆくのですって。鯉も、鮒も、みんな動かずに、宙に浮いているような感じ。

 小鬼は子鬼にあらずして、小鬼という立派な種の名前なのです。綿貫さんは何かものごとを根本から誤解しておられる。鬼族は北から南、様々な種が分布していて、出世魚のように同一個体が成長につれて名を転じてゆくというようなものではありません。

ここの、主人公が理不尽に怒られている感じいいですよね。安部公房とか倉橋由美子みある。

解説がちょっと残念だったかな。本文の調子とまるで合ってない解説って割と見かけますが、どういうマッチングしてるんだろう。

あと、この文庫(新潮)は平成23年の8刷なんですが、価格が362円なんですね。で、平成29年に刊行された続編『冬虫夏草』は、おねだん594円。
普通に考えたらページ数の差なんだろうと思いますが、最近の書籍って妙に高くなった気がする…(疑心暗鬼)。いや、買いますけれども。

 ***

そういえば関係ないですが、数年前、新潮の応募券を集めるとくれる「Yonda?CLUB」が終わってしまったのが悲しかったです。いくつかプレゼント持ってるんですが、次はあのパンダのぬいぐるみを狙っていたのに…。あの文豪ウォッチがいけなかったんじゃないかと(暴言)。
(…この話、まえもしました? そろそろボケてきたかもしれないな…。)

R・D・ウィングフィールド『フロスト始末(上)』創元推理文庫



宝島社『このミステリーがすごい!』の常連だった人気シリーズの最新作。遺作なんですよねこれ。本国では亡くなった翌年、08年に刊行されているのに、なぜ日本で訳書が出たのが17年なのか。著作権の都合か何かなのかもしれませんが、まあそれはどうでも。

イギリスの一地方の警察に勤める、マイペースで下品な発言を連発する警部・フロスト。しかしその自堕落に見える勤務態度の裏には、犯罪者や落ちこぼれた人間の心情も大切にする心が隠れていて…。みたいなテイストの警察小説。

昔はずいぶん好きだったんですけどね。久しぶりに読んでみて、なんだか冷めてしまったというか。

もっと若かった頃、小説というフィクションを浴びるように読んでいた時代。
違う国や時代、立場の人間になりきって出来事をおいかけるのが楽しくて仕方なかった。今でも基本的には変わっておらず、没入感で言えばVRなんて目じゃない体験ができる媒体だと思っていますが(好きですけどね、VR)。

年を取って、「違う国や時代、立場」というものを、リアルで考えるようになって。小説の中のリアリティと、現実=リアルが切り離せなくなった。

経費をごまかし、若い女性はとりあえず食事に誘い、子供には過剰なほどに同情するが、底辺寄りの人間には厳しい。
そんなフロスト警部が、ふと本当の意味で「リアリティ」を持ってしまって。
色あせて見えてしまって、さびしい。

先述のように、10年前に完結していた作品です。だから、変わったのは主人公じゃない。わたしの感性の問題です。

それが、良いことなのか悪いことなのか、正直分からない。
はてなの見すぎなのかもしれないですね…(不適切な発言)(言うほど見てないか)。

ポール・オースター『ガラスの街』


ガラスの街 (新潮文庫)

ガラスの街 (新潮文庫)


妻と息子をなくし失意の中で暮らす小説家・クインは、一本の間違い電話をきっかけに、探偵として事件を請け負ってしまう。依頼者は、かつて「新しい言語」を作り出すために、父親に監禁されていた青年だった。

オースターを読むのはこれで3冊目だと思う(多分)。現代アメリカ文学の旗手と言われても、正直よく分からないですけれども、好きは好きですね。
森羅万象、全ての事象を言語というものの崇高な力で解決しようという、滑稽な試みですけれども下手人は至極まじめなわけで、発想としては面白い。
まあ、無理なんですが。

あの音楽のなかにいること、あの反復の輪のなかに引き入れられること。おそらくあそここそ、人がついに消えうる場だ。

うまいこと、同化して消えられればいいんですけどね。そういう風に生きられる人間は、小説なんか読まないのかもしれない。と思います。


月曜日まであと1日。鬱々としますね。


本日は以上です。


今週のお題ゴールデンウィーク2018」