あなたの歌がききたくて。

小説とVOCALOIDと知らない人のことばが好き。

人工知能(AI)は文学史に名を残す夢を見るか

 さきほどNHKのニュースを観まして、めちゃくちゃテンションが上がったので、100万人が思いつくであろうタイトルで書き飛ばします。
 …と思ったらもうタイトル被ってましたね。様式美ということで。 
 人工知能はSF文豪の夢を見るか? : ギズモード・ジャパン

 で、件のニュースというのはこれ。
 www3.nhk.or.jp

 SF作家・星新一にちなんだ文学賞、「星新一賞」へ、人工知能を使って書いた掌編(ショートショート)を複数応募したところ、その一部が賞の一次選考を通過した、というもの。
 ちなみにこのプロジェクト自体は前から知られているもので、「そうか、選考の一次を通過するところまで来たのか…」という反応の方も多いと思いますが。先日の「AlphaGo」の件もあって、タイミングとしては一気に話題になった感がありますね。

 ニュースを一度見ただけなので、内容は詳しく頭には入ってないのですが、人工知能に小説を書かせるステップとしては、以下のように説明されていたと思います。

 1.要素を大きく、「意味のある文章」と「ストーリー」に分ける。
 2.「いつ」「天気」「何を」という条件を、人工知能に指示して考えさせる。
 3.人工知能が条件をもとに、「意味のある文章」を書く。
 4.人間がそれをもとに「ストーリー」を作る。

 今回の執筆については、全体のうち人工知能が考えたのは1,2割程度で、今後もっと割合を上げていきたい、というようなお話を関係者の方がされていたと思います。

 以前(2012年時点)ではこんな感じで説明されていました。
www.itmedia.co.jp

 ということで、2016年時点で、人工知能が「意味のある文章を作る」ところまでは行っているんだなあ、というのがまず衝撃。構成等まで自分で考えるようになるまでにはだいぶかかりそうだなあ、というのがその後にくる感想ですね。

 
★ ★ ★


 で、考えることは皆同じだと思うんですけれど、「人工知能がどこまで素晴らしい小説を書けるのか?」っていう。

 面白いと思うのは、その疑問に答えるにあたり、「小説の素晴らしさって何? っていうか、小説ってどんなもの?」ということを各自が自分に反問すると思うんですよ。「人間以外の存在」に出会ってはじめて、「人間の活動」が定義されるというのが面白い。

 
 個人的な結論を先に言ってしまうと、人工知能は将来、娯楽小説ならかなり面白いものが書けるんじゃないかなと思っています。
 なぜなら、エンタメは手法がある程度決まっているから。

 私は小説を書いたことはないですが、要素としては例えばこんな感じかなと思っています。

 ・コンセプト/読者層/テーマ、メッセージ
 ・世界観
 ・登場人物
 ・ストーリー
 ・構成

 大雑把なのでツッコミは勘弁頂きたいですが。こんな感じの要素を、パーツを作って組み合わせ、調整して、小説という形に仕上げていたりするんじゃないかなと。
 でもって、これを頭に入れて読んでると分かるんですけど、

 小説を書くのって、めちゃくちゃ面倒な作業だな、と。

 もうね、上手い小説ほど、凄まじく計算されてるんですよ。かてて加えて、「文章力」という、ある程度才能に左右されるどうしようもない大きな要素もありますが。

 人間が感動するような「話の原型」というものは、もう出尽くしている、という話をどこかで読んだような気もします。温故知新ではないですが、物語というのは意外と、時代によって姿を変えているにすぎないのかもしれない。
 人工知能がその辺の組み方を覚えてしまえばですね、泣かせるも笑わせるも自由自在ですよ。ヘンなところは人間に推敲してもらえばいいです。相手は「自分の大事な作品を否定された」=「自分の人間性が貶められた…」とか傷ついたりしないですし。そもそも人間性がないわけで。


 ですが。
 人工知能文学史に残るような文学が書けるかっていうと、まぁ現時点では無理じゃないかと個人的には思います。
 人間の営みや思考を描いた結果、後世に残るほどの大きな質量を持ってしまった、というのが、自分の考えるいわゆる「文学」の定義なんですが。
 ものすごく凡庸な感想ではありますが、コンピュータが人間の内面、思考、感情の機微まで汲んでくれるとは思えなくて。
 対面だったらね。ある程度、表情なり声のトーンなりで読み取れたりするんでしょうが、自分で0から創造できるとは思えない。生老病死、社会、戦争、恋愛、そういったものを自分から描くのは無理かなと。

 可能性があるとしたら、

 ・「人工知能から見た人間」を描く
 ・「自分(人工知能)の内面」を描く
 ・読んだら気が狂うような、かつ意味の通った文章を書く

 のどれかかなぁ。
 最後のやつは厨二病的に心躍るものがありますが。ドグラ・マグラの再来!みたいな売り出し方をされて、読んでがっかり、になる未来が目に見えるような気がしますね。

 人工知能が感情を持ったらどうなるのか? については、興味がありますが。瀬名秀明先生の『あしたのロボット』は感動作なので、未読の方は是非にとおすすめしておきます。


 …とりあえず、そんな日が来るまで長生きできたらいいな。


 本日は以上です。